平成22年度 一条高校「課題研究」支援事業

この課題研究は、奈良市立一条高等学校数理科学科の二年生が、本プロジェクト教員の指導の下、各テーマごとに分かれて平成20年5月より進められてきたものです。

高校生は実験やシミュレーション、解析やフィールド調査など大学で展開されている研究を体験し、各班がそれぞれ取り組んだ活動をパワーポイントにまとめました。

1月28日(金)に「平成22年度課題研究発表会」を実施しました。発表会はテレビ会議室システムを利用して本学の地学実験室と一条高校を二元中継して行なわれました。発表会には、二年生、高校の先生方、本学担当教員、大学院生、教育研究員が参加し、積極的な質問が行われました。

過去の課題研究支援事業 平成20年度課題研究支援事業 平成21年度課題研究支援事業

       

音を聴覚と視覚で感じてみよう

担当者:松村佳子特任教授

「音ってなに?」中学校で学んだことの復習から始めました。音の発生、音の強さ、音の高さ、音色、音速などについて復習をし、さらに発生源による騒音レベル、振動数と音圧レベル等にも触れました。そして、音の伝わり方の実験をし、糸電話の糸の振動は縦波かそれとも横波かを、糸の途中につけた盗聴用の筒を使って確かめました。また糸電話の膜の振動を、膜に当てた光を反射させスクリーンに写すことにより目で確かめました。その後、フォトトランジスターで反射光を受け、増幅して音に変換することを試してみました。最後に「情報伝達装置」(理数教育研究センターで開発した教材)を使って、 音を光に、光を音に変えることを楽しみました。

       

氷のチンダル像の研究

担当者:常田琢准教授

氷をよく観察すると、内部に花のような、雪の結晶のような模様が見えることがあります。氷の内部が部分的に融け、氷に浮かぶ水の泡となったものです。150年前にチンダルという物理学者が氷河の中にこれを発見したため、チンダル像と呼ばれています。本研究ではチンダル像の生成条件や成長過程を調べ、物質の相転移について考察してみました。

       

紫外線が生物に及ぼす影響

担当者:森本弘一教授

紫外線が生物へ及ぼす影響について調べました。太陽紫外線は、波長の長さにより、UVA,UVB,UVCと分けられています。これらのなかでも、UVBとUVCの生物影響が調べられています。UVCは、地上には現在届いていませんが、原始地球では、オゾン層がないため、届いていました。調べた生物は、バナナ、ショウジョウバエ、大腸菌です。いずれもコントロール群と比べて紫外線を照射した群に影響が見られました。バナナは褐色に変化し、ショウジョウバエは、死滅し、大腸菌も死滅しました。しかし、実験方法には、改善点もありました。

       

キノコの「素」を見よう

担当者:菊地淳一准教授

これまで主に腐生性のキノコの栽培を行ってきましたが、今回はそれに加えて、菌根菌のキノコの「素」となる菌根合成も行ってみました。腐生性キノコのもとはおがくずの中の菌糸であるが、菌根菌のキノコのもとは植物の根に形成される菌根です。腐生性のキノコの栽培はおがくずに種菌を接種し、一定条件下で栽培するとキノコが形成されます。マツの種子を殺菌してマツの無菌苗を作成し、一部の苗木に菌根菌を接種し、数ヶ月後に菌根の形成を観察し、無菌の苗と比較しました。

       

地球の大きさを測ろう−エラトステネスの方法の現代的応用−

担当者:和田穣隆准教授

地球の大きさを測るというと何を使うと思いますか?答えは「自分の足」です。でも2200年前のエラトステネスの時代と違い、自分の足の他に使うのはGPSとメジャーです。自分のいる位置(緯度・経度)と歩幅から地球一周の距離を測る実習を、真夏の暑さの中、平城遷都1300年祭が開かれていた平城京跡でおこないました。その結果から実際の地球一周の距離となぜ違うのか?を考えました。

       

超音波技術を応用した流れの計測 −沿岸域の流れの鉛直構造−

担当者:藤井智康准教授

海洋や湖での流れを計測する技術に、近年では超音波のドップラー効果を応用した計測機器(ADCP)が用いられるようになってきました。課題研究ではADCP(Acoustic Doppler Current Profiler)の原理を理解し、実際に現地観測を行いました。2010年9月25日に新西宮ヨットハーバーで現地観測を行いました。この日は北風が強く、大阪湾沿岸部の甲子園浜では海表面の色がエメラルドグリーンに変化する青潮(あおしお)が確認されており、沿岸部では硫化水素臭が漂っていました。実際にこのような沿岸域において、 ADCPを用いて流向・流速を計測し、併せて多項目水質計を用いて水質の鉛直分布を計測し、データ解析を行い、青潮発生のメカニズムについても考えました。

       

ランダムウオークと調和解析

担当者:河上哲教授

ランダムウオーク (Random Walk) は日本語では、乱歩または酔歩と訳されており、そこでの中心テーマは、「家を出た酔っ払いは果たして無事に家に帰れるか?また、帰れるとしたら、その確率は?」となっています。この問題を正多角形や正多面体の辺上で考察し、近年、数理科学の分野で著しい進展をみせている新しい概念であるハイパー群の観点から、いろいろな方法による具体的な計算などを通して、ランダムウオークとハイパー群について体感しました。

       

草木による染物

担当者:大学院2回生

染色とは昔から行われてきた日常生活の中にある理科の一つです。しかし、最近では染色の経験がない、方法を知らない、という人は多いように思います。本課題研究ではこの染色を行いました。1日目ではソメイヨシノの花が咲く前の枝(3月のもの)と花が散った後の枝(4月のもの)で染色を行い、発色の違いを観察しました。媒染材は日常生活で使うこともあるミョウバンを使用することで、染色が特別な道具や薬品を使用しなくても簡単に普段の生活の中でもできることを生徒に気付かせようとしました。2日目では媒染剤の違いによる、発色の変化を観察しました。染料はインドアカネ、媒染材は酢酸アルミニウム、木酢酸鉄、銅媒染液、消石灰を用いて染色しました。